こんにちは。トランペット講師の高本です。
さて、今回は空気の流れについて第2弾として、『空気の加速・減速』について考えていきたいと思います。
空気の流れ
トランペットらしい高い音や力強い音!
トランペットの大きな魅力のひとつだと思います!
そんな音を吹く時に必要になってくるのが、空気の流れの大きなエネルギーです。
また、柔らかくて美しい弱音もトランペットの魅力です。
この時には、リラックスした軽やかな空気の流れが必要になります。
トランペットを吹く時には、アンブシュア(楽器を吹く時の口の形)・舌の使い方・プレス(マウスピースを唇に当てる力加減)など、あらゆるもののバランスで音をコントロールしています。
その大前提として、この空気の加速・減速が自由に使える状態にしておくと、豊かな音色で様々な事が出来るようになります。
水道とホース
さて、そこで分かりやすく感覚を伝えるために、空気の流れを「水道とホース」に例えてみます。
(ホースの先が口、ホースが喉や気管、そして蛇口が肺です!)
ここで、ホースから出た水を遠くまで飛ばすためにはどうすれば良いでしょうか?(つまり、空気の勢いを加速する方法)
A:出口の調整
1つ目は、ホースの先をつまんで勢いをつける方法です。
これはトランペットの演奏でいうと、シラブル(舌の位置など、口の中の形のこと)の調整にあたります。
中・低音域では「ア」や「オ」と喋る時のように、舌を低い位置におきます。
そして、高音域では「エ」や「イ」と喋る時のような舌の位置を高くします。
そうする事で、ホースの先をつまんだ時のように、出口で通り道が狭くなり一気にスピードを上げる事が出来ます。
B:量の調整
2つ目は、大元の蛇口から出てくる水の量を増やすことです。
これはトランペットの演奏でいうと、肺やお腹から送り出す空気の全体量を増やしてあげることにあたります。
AとBのバランス
上記2つの方法がありますが、実際演奏する際にはこの両方をバランスよく使う必要があります。
Aの方法だけでは、いくらホースをつまんでも、どこかでこれ以上勢いを増やせない限界がきてしまいます。
また、遠くに飛ばせば飛ばすほど水の流れは少なく細くなります。
これは、つまり演奏する時にも細く小さい音になるという事です。
また、逆にBの方法だけを使うとどうなるでしょうか?
たっぷりと水を飛ばすことができますが、遠くに飛ばそうと思えば思うほど、ビックリするほどの水の量、水圧が必要になります。
消防車のポンプなら可能ですが・・・これは誰でも出来ることではありません。
さらに、細かいコントロールはなかなか難しくなります。
これは、演奏する際には、心肺機能がとても高い人やそのための楽器のセッティング(軽い楽器・小さく浅いマウスピースなど)でないと、吹き続けることが至難の技であること。
音の繊細なコントロールが難しくなることにあたります。
そういう訳で、主にBの全体量で音を作って、Aのシラブルで微調整を加えるような吹き方が僕は理想だと思っています。
注意すること
ちなみに、ここで注意しないといけないのは、ホースの真ん中を細くしてしまうことです。
演奏に置き換えると、喉や声を出す声帯の辺りをしめてしまうことです。
レッスンの際に「高い音が細い or 苦しい or 吹けない」と言われる時、この状態になっているケースが時々あります。
この場合、何が起きるでしょうか?
ホースでイメージすると分かり易いですね。
水やりの時にホースを踏むイタズラの状態です。(小さい頃よくやっていました…)
ホースの真ん中を細くしてしまうと、蛇口をひねって水を増やそうと思っても、流れづらいため必要以上の圧力が必要になり、しかもその先で幅が広がるために逆に失速してしまいます。
またホースの先をつまんだとしても、狭くなっているところより細くつままないとスピードが上がらなくなり、結果的にコントロールの幅が一気に狭くなります。
これは演奏する時にも同じ事が言えます。
喉や声帯が閉まると、いくら空気を流そうとしても苦しくなるだけで、出口での空気の量は少ないままです。
「よし!じゃあそうしないようにしましょう!」
と言ってすぐに出来れば良いのですが、、、厄介なのが、この喉や声帯というのは意識的にコントロールすることが難しい部位で、ほぼ条件反射的に閉まる時には閉まってしまうということです。
喉や声帯が締まる原因
原因1:力み
では、どんな時に閉まるのか?
最大の原因は「力み」です。
例えば、ウェイトリフティングのように重たいものを持つ時、身体を強く動かすために「フンっ!」と息を止めて体を固めて力を発揮しようとします。
強く空気を流そうと思った時に、それを力で行おうとしてしまうと、身体を固めて自然にこの状態になってしまうケースがあります。
この身体の使い方は、声帯を閉めて身体の内圧をあげるので、Cのような状況を生み「頑張れば頑張るほど流れない」という状況に陥ります。
原因2:ストレス
また、緊張感や不安などストレスがかかっている時にも反射的に閉まってしまうことがあります。
これは人間本来の「外部からの攻撃に備えて身体を緊張させる防衛反応」に由来します。
生活上は役に立つ反応なのですが、楽器を吹く上では望ましくありません。
対策方法
そうならないためには、気持ちをいつも落ち着けて楽器を吹くことを楽しむこと。
そして、空気を流すときの意識を「水道のホース」ではなく、いわゆる「水道の蛇口」の部分に持っていくことがひとつの良い方法だと思います。
腹式呼吸や、胸式呼吸など人によって色々な呼吸法がありますが、共通しているのは、口や喉ではなく、空気を送るポンプの役割をしているところ(図の蛇口)をしっかり使えるようにすることが目的だということです。
空気を送るポンプがきちんと使えるようになれば、余裕を持って空気を加速させることができるので、自然と余計な力みが入らない吹き方になっていきます。
とにかく大切なのは、「喉や声帯を締めなくても沢山空気が流せるんだ!」という身体の使い方を、何度も何度も練習して身体に教えてくせづけていくことです。
加速・減速の練習方法
理屈ばかりが長くなってしまいましたが、以上のことを踏まえて、実践に移っていきましょう。
空気の加速・減速を掴むために、まずはクレシェンド、デクレシェンドの練習が僕は効果的だと思います。
クレッシェンド・デクレッシェンド
クレシェンドする時に喉で空気が詰まっている感じはしませんか?
力を入れるのではなく、流れる空気の量がどんどん増えていくようなイメージで、楽にクレシェンドをしてみてください。
デクレシェンドする時も、空気の流れを止めたり絞るのではなく、流れている量が徐々に減っていくようにします。
ポイントは、音色が豊かなまま大きく、また小さくなっていくようにすること、音程が変わらないようにすることです!
ムーーンという詰まった音になったり、力のないフニャフャな音にならないやり方を見つけましょう。
初めは難しいですが、そうすることで空気の流れとアンブシュアのちょうどいいバランスが身につきます。
フォルテ・ピアノ
次は、先程練習したクレシェンドデクレシェンドを速く行います。
フォルテからスタートをして、一瞬でピアノ、そしてまたすぐフォルテに、そしてピアノに・・・と身体全体が一つのポンプになっているような感じで、空気をたっぷり加速・減速させてみましょう。
口や喉でコントロールをしようとせず、お腹から空気を流して、流したら流した分だけ口が振動して音に変わるように、余裕のある状態で吹きます。
体の外、ベルの先で音が鳴っているようなイメージを持つとうまくいきやすいかもしれません。
いかがでしょうか?
空気を吹き込む時に、お腹のみぞおちの辺りが働いているのが感じられますか?
もし感じられれば、そこがトランペットを吹く時に必要なポンプの役割の筋肉です。
力みがちな高音やフォルテの時に、その部分から空気を流すようにすると、力みを回避することが出来ます。
なかなかハードで疲れる練習ですが、小さな休憩を挟みながら、トレーニングのつもりで自在に操れるよう毎日取り組んでみてください。管楽器演奏に欠かせない、吐く能力が高まります。
フォルテ・ピアノ(音階)
3つ目のトレーニングとして、高い音へ上がっていく練習です。
音階練習を交えながら、上がった音で譜例2と同じfpfp~の空気の加速を行います。
お腹から空気をたっぷり流して太い豊かな音色のまま、音が上がっていくようにします。
音が細くならないように、口の緊張や力みで上がらないように練習してみてください。
もし上がっていく中で、fpfp~(空気の加速)をすることが難しくなれば、どこかで空気の通り道が狭くなっているかも知れません。
一つ前の音に戻って、その同じ感覚のまま楽に流していける感覚を見つけてみましょう。
まとめ
以上、長くなりましたが、空気の加速・減速のイメージはなんとなく伝わりましたでしょうか?
このトレーニングで身につけた空気の使い方を、色々な練習や曲で高い音が出てくる時に是非活かして練習してみてください。
曲によって様々な強弱やアーティキレーションがありますが、まずは空気をたっぷり加速させて楽に高い音が響くようにすることが出来れば、あとのニュアンス付けは簡単になります!
最後に、楽器の演奏は「これをやれば、すぐにうまくなる!」というものではなく、ひとつひとつの要素の積み重ねの上に成り立ちます。
今回は空気の流し方にポイントを絞って話していますが、がむしゃらに空気を流しても、それがうまく振動に繋がらなければ、逆に全体のバランスを崩すことにつながりかねません。
大切なのは、いつも力みなく、よく響いた素敵な音を吹くように心がけることです。
小さな上達、発見を楽しみながら、沢山トランペットを吹いていきましょう!
トランペット講師 高本
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